昔のおはなし。 福島に旨い酒がある。 この話を基に、蔵元と会う約束をつけ車をとばした。 出迎えてくれたのは、自分と同じくらいの年齢の男性。 この蔵の9代目兼杜氏である。 雑談もそこそこに蔵を見せてもらう。 造りが終わってしまったせいもあるが、閑散とした蔵内は、極小蔵であることを容易に想像させる。 利き酒は、速醸系純米と山廃系純米。 粗削りではあったが、堂々とした酒だ。 彼が一生懸命醸したことが、酒を通して伝わってくる。 一発で答えが出る。 この酒を売りたい。 この酒の進化をみていきたい。 あれから二十数年。 当時輝きを放ち始めた原石は、銘酒と言われるステージを一気に駆け上がり、押しも押されもしない名杜氏、銘醸蔵へと進化を遂げた。 彼が語ってくれた印象的な言葉がある。 『飲んだ人すべてが「旨い!」 そう思える酒が、この世には存在すると思う。』 |